花猫風月詩酒に酔う  壊れかけの教養 狂奇冴感 桃水ブログ

人類の欲望のつけを払わされる世代への言葉集  大人向けの為 小人の閲覧禁止 個人の見解であり、真実と異なる場合もございます。

街の灯り

息でくもる窓に書いた 君の名前指でたどり

あとの言葉迷いながら そっといった    (阿久悠先生)

 

彼女とスキー場に行き、ゲレンデを見下ろす部屋に泊まった。

ナイターのカクテル光線を見ようと、カーテンを開けると、

窓ガラスがくもっていた。

僕は指で彼女の名を書き、彼女は僕の名を書いて、

傘を書き足し、二人の名前を相合傘で結んだ。

 

電気製品のメンテナンスの仕事をしていた僕は、

会社の命令で、まだ直せる機械を、

「もう直せません。新品に買い替えて下さい。」

と言わされていた。

お客さんをだまし、悲しませるのが辛くて…。

僕は、会社を辞めるつもりでいた。

フリーターになって、理不尽なことから逃れようと思った。

酷い生活になるのは分かっていたので、彼女とは別れた。

 

年収は半分以下になり、生活は苦しいけど、

人を悲しませていい暮らしをしていた時より、

精神的には、今の生活の方が断然楽。

 

後で彼女と偶然会ったとき、

「私は、不幸になる覚悟はできてた。」

と、言ってくれたけど、僕は心の中で、

「君ならそう言うとわかってから、道ずれにできなかった。」

とつぶやいた。

 

この歌好きで、たまに口ずさむと、あの時の事思い出す。

あれから二十年以上の時が過ぎ、

世間に背を向けた僕は、ふさわしく暮らしている。